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脱炭素を巡る社会と中小企業の脱炭素経営

2050年には温室効果ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を達成することを目標に、日本は国全体で脱炭素社会への取り組みを進めています。
中小企業もこの方針に沿った経営を求められており、大きな転換期です。
国も目標達成を実現するために、企業の省エネ化を応援するさまざまな支援制度を立ち上げてバックアップしています。

ここでは、中小企業が取り組むべき脱炭素経営のメリットや、国の補助金などの支援制度の仕組みについて、くわしくご紹介します。

目次

1. 脱炭素社会とは

地球温暖化の問題は深刻で、気候変動に関する国際機関であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)において、2023年3月に発表された最新の報告書によると、気候変動の危機的状況は以前よりさらに進行し、緊急の対策が必要な状況とされています。

最新の第6次統合報告書(AR6)によると、「2035年までに温室効果ガスの排出量を60%削減すること」が必要であると明示されました。
温室効果ガスの中でも特に問題となるCO₂の排出量については、さらに厳しい65%の削減が求められています。

脱炭素社会とは、文字通り、CO₂などの温室効果ガスの排出について、実質ゼロを実現する社会です。
「実質ゼロ」というのは完全になくすということではなく、排出される量と、森林などに吸収される量が同じ量でバランスが取れている状態(カーボンニュートラル)を目指しています。

これまで石油や天然ガス、石炭といった化石燃料に頼っていたエネルギー消費を、再生可能エネルギーや温室効果ガスを排出しない風力や太陽光発電といったクリーンエネルギーに転換し、CO₂そのものの排出量を抑えるのはもちろん、カーボンオフセットなどによって、国の目標を達成することが求められています。

(1)再生可能エネルギーの導入や利用拡大

石油、石炭、天然ガスといった化石燃料を使用することでCO₂排出量は多くなります。
さらにこういった化石燃料は後50年で枯渇する見通しのため、代替エネルギーに切り替えていく必要があります。

それが、水素エネルギーのような資源が枯渇せずにCO₂排出量も削減できる再生可能エネルギーです。
中小企業には今後、新しい設備を導入して再生可能エネルギーを利用していくことが求められています。

(2)省エネ化

現在は電力を生み出すために、化石燃料を消費する火力発電が大きなウエイトを占めています。
中小企業がまずできるCO₂排出量削減の取り組みは、社内で省エネ化を促進して消費電力を軽減していくことです。

(3)クリーンテクノロジーの導入

クリーンテクノロジーとは、CO排出量を削減できる太陽光エネルギーや風力・水力・地熱エネルギー、または生ゴミや廃棄物などを原料にして得られるバイオマスエネルギーなどを生み出す技術です。
クリーンテクノロジーによって得られるエネルギーを利用していく設備投資も、中小企業には求められています。

(4)カーボンオフセット

カーボンオフセットとは、どうしても削減できないCO₂排出量についてはほかの取り組みによって埋め合わせをしていこうという考え方です。
中小企業がほかのCO₂排出量削減の活動に投資したり、CO₂排出量をクレジットという形式で購入したりする方法があります。

2. 中小企業に求められる脱炭素経営

今後の経営で、中小企業には脱炭素の取り組みを強く求められてくるでしょう。
積極的に取り組むには脱炭素経営のメリットとデメリットをしっかり理解しておく必要がありますし、支援制度についておくと推進しやすくなります。

(1)中小企業が脱炭素経営を行う社会的な責任

脱炭素社会の実現に向けた取り組みは、世界共通認識になりました。
事業で売上を伸ばすことは重要ですが、脱炭素の取り組みは同じ重みを持つようになっています。
いかに事業を広げて成功できたとしても、脱炭素の取り組みを疎かにすれば取り残されていくでしょう。

これから先は国や大企業だけでなく、中小企業にとっても脱炭素に取り組むことが社会的な責任なのです。

(2)中小企業が脱炭素経営を行うメリットとデメリット

世界的な取り組みである脱炭素社会の実現への取り組みは、国際社会における国の中心的な事業です。
そのため国は、温室効果ガス排出抑制につながる工場や倉庫・設備の省エネ化について積極的に進める企業を応援し、補助金などの支援制度を設けています。

これらを上手に使って省エネ化を進めることは、企業側にとっても大きなメリットがあります。
ここでは、中小企業が脱酸素経営を行うメリットやデメリットについてくわしくご紹介します。

① 脱炭素を行うメリット

省エネ化を推進していくことで、価格が上昇しているエネルギーのコスト削減ができます。
ヨーロッパではCO₂排出量によって商品価格が上下する仕組みがありますので、今後、日本の市場でも採り入れられる可能性があります。
そうなった際に優位性を確保できますし、脱炭素の取り組みをしている中小企業は金融機関からの融資も受けやすくなります。

また、脱炭素に取り組んでいることをアピールできれば、ブランディングの強化や従業員のモチベーションアップ、求人・採用の強化にも良い影響があります。
国が行う支援事業を使って省エネ化を進める場合は、本来自社負担をしなければならなかった設備投資についても、補助金を使って長寿命化や省エネ化を進めることにつながります。

② 脱炭素を行うデメリット

脱炭素の取り組みを始めるには、再生可能エネルギーを利用する設備などを導入しなければならず、初期費用がかかります。
導入した設備のメンテナンスにもコストがかかりますし、取引先が脱炭素経営に非協力的な場合、サプライチェーンの見直しも必要になってくるでしょう。
そういった点も十分に考慮して設備投資をする必要があります。

もちろん、そのために国はさまざまな支援策を立ち上げています。
後述する国や自治体の支援事業を上手に使うことで、初期費用やメンテナンスコストを最小限に抑えて脱酸素経営を進めていくことが可能になります。

(3)国や自治体の支援事業を上手に使う

(経済産業省資源エネルギー庁事業者向け省エネ情報ページより引用)

中小企業の脱炭素経営の負担を軽減するための支援制度もあります。
省エネ補助金については令和4年度第2次補正予算で500億円の強化策が示され、非化石エネルギーへの転換するため設備や省エネ効果の高い設備を導入すると補助を受けられます。

令和4年度補正予算は、事業内容A先進事業、Bオーダーメイド型事業、Dエネルギー需要最適化対策事業にあたる「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業補助金」とC指定設備導入事業、Dエネルギー需要最適化対策事業にあたる「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」の2事業に分けて実施されます。
1次公募は2023年4月時点で締め切られていますが、2次公募に関する概要・スケジュール等は詳細が決まり次第ホームページ上で公表されます。
令和4年度補正予算事業の公募は複数回に分けて行われる予定ですので、上記リンク先を確認して、常に新しい情報を取得するようにしましょう。

事業内容によって補助金上顎は異なりますが、上限は最大15億円で、中小企業の補助率は2/3から1/2です。
3年間で5000億円の支援態勢となりましたので、今後、さらに新しい支援が拡充される可能性があります。支援制度を利用したいとお考えの事業者の方は、経済産業省や環境省のWebサイトを常に確認しましょう。

経済産業省 資源エネルギー庁 省エネ関連情報 各種支援制度

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3. まとめ

世界の動きに取り残されないためにも、中小企業は今から脱炭素経営をしっかりと進めていく必要があります。

大きく飛躍できる可能性もありますから、ぜひ積極的に推進していきましょう。