病院・介護施設の老朽化サインとは?メンテナンス工事のタイミングと費用相場

病院や介護施設などの老朽化は、患者や入居者の安全性・快適性に影響を及ぼします。
外壁のひび割れや屋根の雨漏りといった明らかなサインから、内装や空調設備の劣化、水回りのトラブルまで、老朽化はさまざまな形で現れます。
加えて、適切なメンテナンス工事の選択と計画的な実施は、施設の長寿命化と運営への影響を最小限にするための鍵となります。
本記事では、老朽化の主なサインやメンテナンス費用の目安、補助金の活用方法や修繕の進め方などについてご紹介します。
目次
1.病院・介護施設に見られる老朽化の主なサイン

病院や介護施設などの建築物では、どのような状況にあれば老朽化が疑われるのでしょうか。
比較的わかりやすい外まわりや内装の状態、気付きにくい設備まわりも含めてご紹介します。
(1)外壁の劣化
外壁の劣化が進行すると、壁内部にも影響が出てくる可能性があり、構造体にも劣化が進行するリスクがあります。
また、タイルやサイディングなど外壁材の剥離落下は、通行人や車などに損害を与える危険もあるため、早急な対応が必要とされます。
ひび、ヘアクラック
外壁のひび割れは老朽化のサインといえます。
自然な経年による劣化が要因となることもありますが、地震や強風など建物に振動が伝わる際にひびが入ることもあります。
ひびの大きさはまちまちで、ヘアクラックといわれる髪の毛ほどの細さのひびにも注意が必要です。
チョーキング
外壁が劣化することで外壁表面が粉状になり、耐久性が低下する現象です。
手で触れると白い粉がつくため発見しやすい劣化です。
剥離
ひび割れやシーリングの劣化部分などからの雨水の侵入が原因で、外壁が剥がれてくる現象です。
内部から徐々に劣化が進行しているため、気付きにくいことがあります。
(2)雨漏り
雨漏りを発見した際には、屋上や屋根、外壁などのどこかに不具合があると考えられます。
雨漏りといっても、雨が降っているときにしずくが落ちてくるばかりではなく、時間をかけてじわじわと水がまわり、天井のシミや壁紙の浮き・剥がれ、カビ臭、窓まわりの黒ずみなどとして、あとから表面化することも多いです。
雨とは関係なく出てくるものですので、ついつい見逃す可能性が高い部分です。
(3)内装の経年劣化
建物の老朽化は内装にも現れてきます。
床材の剥がれや沈み、軋み、段差の発生や臭いなどが劣化のサインです。
床の段差は転倒リスクにつながる可能性があります。
(4)水まわりのトラブル
トイレやシャワーなど給排水設備の不具合は、よくあるケースです。
経年により配管が古くなると、亀裂の発生などにより水漏れが起きるリスクが高まります。
トイレなど外側から見える不具合はわかりやすいですが、床下や壁内部の配管の不具合は、天井のシミや壁紙の剥がれなどで気付く場合もあります。
(5)空調設備の不調
エアコンなどの空調設備は、一定期間の耐用年数で不具合が発生しがちです。
コンプレッサーや配管の劣化などにより十分な機能が発揮できなくなると、室内環境にも影響が出てきます。
2.メンテナンス工事の内容とかかる費用の相場

メンテナンスを行うには、どのくらいの費用がかかるのか気になる部分です。
ここでは、調査の種類や費用、改修を行う際の費用目安をご紹介します。
(1)調査費用
赤外線調査
赤外線カメラで撮影し、浮きなどを解析して判定する方法です。
打診法に比べて手間が削減されることがメリットですが、特定建築物定期調査として判定する場合は、正確性に欠けるともいわれます。
費用相場 | 130~360円/㎡ |
打診調査
主にタイル性の外壁に用いられる調査法です。
ハンマーなど道具を使い外壁を叩きながら、浮きや剥がれなどを調査するものです。
建物規模によっては、別途ゴンドラや足場設置などの費用が必要です。
費用相場 | 160~900円/㎡ |
耐震調査
建物の耐震性を調査します。
とくに1981年以前の、旧耐震基準で設計されている耐震性の低い建物は、新基準をクリアしなければなりません。
その場合、調査結果をもとに補強内容についても検討します。
構造 | 費用相場 |
鉄筋コンクリート造 | 2,000~3,600円/㎡ |
鉄筋造 | 2,500~4,200円/㎡ |
(2)外壁・屋根改修
モルタル補修・塗り替え
病院・介護施設のモルタル塗り替えの費用は、規模や劣化状況、使用する塗料の種類によって変わります。
また、クラック補修はクラックの深度によっても費用が変わります。
内容 | 費用相場 |
クラック補修 | 1~10万円/箇所 |
塗り替え | 100万円~(面積による) |
サイディング補修
病院・介護施設のサイディング補修は、劣化状況や補修方法、塗料の種類、広さによって異なります。
部分的な補修であれば、数万円程度で済むこともありますが、全面塗装や張り替えでは、数十万円から数百万円かかることもあります。
内容 | 費用相場 |
部分補修(穴・欠けなど) | 1万円~6万円/箇所 |
部分張り替え | 3,500円~9,000円/㎡ |
全面塗装 | 2万円~35万円/坪 |
全面張り替え | 3.6万円~4.5万円/㎡ |
シーリング補修
外壁のすき間を埋めるための素材です。
外壁のシーリングの寿命は一般に5年から10年です。
紫外線など環境によっては劣化が早く進むため、定期的なチェックとメンテナンスが必要です。
内容 | 費用相場 |
シーリング打ち替え | 900円~/m |
シーリング打ち増し | 700円~/m |
タイル目地のモルタル補修
タイル同士の隙間や継ぎ目(目地)を埋めるためのキメの細かい充填材のことで、ひび割れが発生した場合は、補修が必要です。
費用相場 | 4,000円~/㎡ |
屋上防水工事
雨漏り防止のために重要なメンテナンス工事です。防水素材によって費用が異なります。
内容 | 費用相場 |
アスファルト防水 | 5,500円~/㎡ |
シート防水 | 塩ビ:4,000円~/㎡ 合成ゴム:3,000円~/㎡ |
ウレタン防水 | 5,000円~/㎡ |
FRP防水 | 4,000円~/㎡ |
断熱改修
塗装による断熱改修の費用です。
断熱改修は省エネ補助金などが活用できる場合があります。
費用相場 | 3,000円~/㎡ |
足場設置費用等
足場設置による高所作業が必要な場合、別途費用がかかります。
費用相場 | 600円~/㎡ |
(3)内装改修
床の補修、張り替え
病院などの施設で使われる床は、ポリ塩化ビニル、合成ゴム、ナイロンなどの素材が一般的です。
素材によって費用も異なります。
費用相場 | 3,000円~/㎡ |
天井の補修、張り替え
病院や介護施設で使われている天井の素材は、クロスや天井用の化粧石膏ボード(ジプトーン)などがあります。
内容 | 費用相場 |
天井クロス張り替え | 3万円~5万円/20㎡ |
化粧石こうボード張り替え | 3万円~6万円円/20㎡ |
穴あき補修 | 1万円~1.5万円/箇所(大きさによる) |
壁のひび補修、塗り替え、クロス張り替え
ひび補修は大きさや深度によって費用が異なります。
内容 | 費用相場 |
内壁クロス張り替え | 5.1万円~8.4万円/20㎡ |
小規模補修 | 5,000円~/箇所 |
大きな補修 | 1万円~/箇所 |
(4)トイレ・給湯器・水まわり改修
設備の規模により補修費用が異なります。
省エネ対象の設備機器の入れ替えなどは、補助金を活用できる可能性があります。
内容 | 費用相場 |
トイレ交換 | 15万円~/箇所 |
(5)エアコン・空調設備改修
箇所やグレードにもよりますが、省エネ対象の空調設備の入れ替えなどは補助金も活用できます。
費用相場 | 100万円~ |
病院や介護施設のメンテナンス工事に補助金は活用できる?
病院や介護施設のような建物でも、一定の省エネ基準に該当するリフォームや設備機器の導入に補助金を使うことができます。
光熱費の高騰が続くなか、断熱改修や高効率機器への入れ替えで経費削減も期待できます。
参照:【2025年最新】省エネ補助金で賢く光熱費の削減!工場・倉庫・病院・介護施設向け補助金活用ガイド
3.修繕のベストタイミングと進め方のポイント

病院や介護施設のメンテナンスはどのように進めればよいのか、ベストなタイミングについて解説します。
(1)修繕の種類
予防として修繕するのか、修繕が必要となったから行うのかにより着手する時期も変わります。
修繕の必要性がすでに発生しているなら、早急に対処するのがベストです。
(2)点検は何年おき?どの範囲を点検すべき?
建物の規模にもよりますが、特定建築物定期調査に該当する場合は3年ごとに外壁調査が必要です。
また打診調査は新築から10年、改修から10年経過など基本的に10年ごとの調査となります。
(3)修繕計画の立て方
患者や入所者など利用者がいる状況での修繕は、計画的に行うことが大切です。
まずは現状を確認し、どの部分の修繕が必要なのか把握します。
その後、修繕箇所ごとにどの時期に行うのが適切か判断します。
全体改修か部分改修かの判断は、業者と相談しながら進めるのがよいでしょう。
(4)業務への影響を最小限にする工期調整と段階的実施の工夫
修繕しながら業務を続けるケースも多いと思います。
業務への影響が最小限に留まるような施工内容、工期調整、箇所ごとに段階的に実施するなど、さまざまな工夫が必要です。
病院や介護施設の修繕実績が豊富な業者に依頼すると安心です。
4.よくある質問

Q1. 修繕と建て替え、どちらがコスト的に得ですか?
築年数・躯体の状態によりますが、建物の基本構造が健全であれば修繕の方が費用は抑えられます。
Q2. 業務を止めずに修繕することは可能ですか?
夜間施工やエリア分割施工などで対応可能な場合あります。施工業者との事前調整が重要です。
Q3. 補助金の申請は自分でできますか?
国の補助金などは登録事業者が行います。まずは対応可能な業者へ相談するのがおすすめです。
5.まとめ

病院や介護施設の老朽化は、外壁の劣化や設備の不調などに現れ、多方面に影響を及ぼします。
早期発見と適切なメンテナンスにより、修繕コストや安全性の問題を未然に防ぐことが可能です。
また、補助金を活用した省エネ改修なども選択肢に入れ、費用負担を軽減する工夫が重要です。
適切な修繕計画を立て、患者や入居者が安心で快適な環境で利用できるように進めていきましょう。
- カテゴリー : 工場・倉庫、修繕・リフォーム