【専門解説】クリニック&病院で雨漏りが発生したら?原因と再発防止のポイント

クリニックや病院の雨漏りは、診療機能や患者満足度に直結する深刻な問題です。
特に医療施設は衛生性や安全性が求められるため、早急かつ的確な対応が求められます。
雨漏りの箇所によっては一時的に休診しなければならない自体にもなりかねないため、被害が大きくならないうちに確実に対処しておくことが重要です。
本記事では、医療施設で雨漏りが発生したときのよくある原因・応急対応・再発防止策・業者選定のポイントまで、わかりやすく専門的に解説します。
目次
1.クリニック・病院で雨漏りが起こると何が問題か?

クリニックなど医療施設での雨漏りは、設備機器なども含めさまざまな部分で影響が大きくなりがちです。
具体的に想定される問題点についてご紹介します。
(1)診療環境への影響(天井のシミ・水滴・におい)
雨漏りが起こると、診療環境への影響が懸念されます。
天井にシミが広がると、患者さんに不衛生な印象を与えますし、水滴が治療器具や床に落ちると、感染や転倒につながるリスクもあります。
さらに湿気がにおいの原因となり、待合室や診察室の空気環境を悪化させる可能性があります。
(2)患者さんやスタッフのイメージ低下
患者さんはもちろん、働くスタッフも、クリニックや病院に対するイメージが低下するかもしれません。
医療機関は清潔さが不可欠です。
雨漏りの放置は「メンテナンス不十分」という印象を与え、患者さんやスタッフの信頼を損ない、企業のイメージ低下にもつながりやすくなります。
(3)医療機器・電子カルテ・在庫品への被害リスク
医療機器のような精密機器が雨で濡れてしまったら、動作にも影響が出る可能性があります。
また、大切な電子カルテや在庫品などへ被害が広がる恐れもあります。
機器が雨漏りにより品質劣化を起こせば、患者さんの治療に直接的な影響を及ぼします。
(4)建物内部(天井裏・配線・断熱材など)への見えないダメージ
建物内部に水が浸透すると、構造体などの劣化につながる恐れがあります。
雨漏りは表面上見えている部分だけでなく、建物内部の見えない部分にもダメージを与えます。
天井裏や壁内部には電気配線や断熱材があるため、電気配線が水分でショートしてしまうと、停電や火災の原因にもなることがあります。
2.医療施設でよくある雨漏りの原因と補修費用の目安

なぜ雨漏りが起きてしまうのか、その原因となるポイントや補修する場合の費用目安について解説します。
(1)屋上防水の劣化・ひび割れ
屋上防水の劣化による雨漏りは、施設などビル型の建物に多い要因です。
築10年以上の建物では、防水層の劣化が進むため、ひび割れ箇所から水が侵入しやすくなり、階下の雨漏りにつながります。
補修するには、ウレタン塗膜やシート防水の再施工が必要です。
- 補修費用(1㎡あたり)
ウレタン防水 | 6,500円~ |
FRP防水 | 6,500円~ |
シート防水 | 6,000円~ |
アスファルト防水 | 6,000円~ |
(2)外壁と屋根の取り合い部からの浸水
外壁と屋根の取り合い部分はシーリング材が劣化しやすく、ひび割れなどから雨水が浸入する可能性が高い箇所です。
- 補修費用・・・3万円~/箇所
(3)窓・サッシまわりの防水不良
窓・サッシまわりは外壁などとの取り合いにシーリングを使っていることが多く、傷むと雨水が侵入しやすくなります。
また、雨だけではなく、冬季は積もった雪が長時間留まることで、雨漏りの原因になるケースがあります。
- 補修費用・・・5万円~/箇所
(4)空調・配管まわりの貫通部からの漏水
屋上のダクトや配管貫通部の防水処理が不十分だと、漏水ルートになることがあります。
漏水箇所を確定する必要があり、大掛かりな工事になることもあります。
漏水規模により費用も異なります。
- 補修費用・・・1万円~/箇所
(5)雨樋の詰まりによるオーバーフロー
落ち葉やゴミで雨樋が詰まっていると、少量の雨でも雨水が逆流し、屋根や外壁を伝って漏水する可能性があります。
日ごろのメンテナンスが大切な箇所でもあります。
- 補修費用・・・5,000円~/箇所
雨漏り補修に事業者向け補助金や火災保険は使える?
自治体では老朽化対策補助金があり、防水改修工事の一部を公費で賄えるケースがあります。
また、突発的な雨漏り被害は火災保険の「水災補償」でカバーできる場合もあるため、ご自身の契約内容を確認しておきましょう。
3.雨漏りが起きたときの初動対応と注意点

もし雨漏りが起きてしまったときは、どのように対処するのがよいのか不安に思っている方もいるでしょう。
ここでは、万が一のときに行うべき対応をご紹介します。
(1)まずやるべき応急処置(バケツ設置・養生)
応急処置は第一優先です。
漏水箇所の真下をビニールシートなどで養生してバケツやトレイを置きます。
濡れた床は滑りやすくなるので、患者さんやスタッフへの二次災害につながらないようしっかりと拭き取っておきましょう。
また、立ち入らないようにガードしておくことも大切です。
(2)建物オーナー・管理会社・保険会社への連絡
オーナーへ速やかに報告し、管理会社や保険会社にも状況を共有します。
証拠写真を撮影し、後日の保険金請求や補助金申請に備えます。
(3)患者さんへの配慮・診療業務への影響最小化
待合室への案内サインを設置し、診療への影響を最小限にします。
同時にスタッフの負担が増えるため、シフト調整や応援要員の確保も検討しましょう。
(4)応急対応と恒久対応の違い
応急処置はあくまでも「その場しのぎ」です。
根本的な修繕を行わなければ、雨漏りの再発リスクは高いままです。
恒久的な対応として、雨漏り箇所の原因調査をしっかりと行い、的確な補修工事を実行する必要があります。
4.再発を防ぐために必要な調査と修繕のポイント

雨漏りは再発しやすいものです。
繰り返しの被害に遭わないためには、次のような対策が重要です。
(1)雨漏りの原因特定には「調査力」が必要
「散水試験」で漏水ルートを特定する、「赤外線サーモグラフィー」で湿潤箇所を可視化するなど、雨漏りを止めるためには詳しい調査が不可欠です。
安易な応急処置ではなく、原因を徹底的に究明できる業者を選び実行しましょう。
(2)表面だけの修理はNG、構造的な対策を含める
シーリング打ち替えや防水塗装だけで済ませると、下地の劣化が見逃される可能性があります。
下地補修や断熱材交換を含めた総合的なプランが必要です。
(3)建物の築年数・構造に応じた適切な修繕方法
鉄筋コンクリート、鉄骨造、木造などそれぞれ劣化の進行度が異なります。
築年数別の改修手法とコスト目安を把握し、信頼できる業者に適切なアドバイスを受けて、長期的なライフサイクルコストを考慮しましょう。
(4)雨漏り診断
雨漏り診断は、専門的な技術者が調査を行い、雨漏りに関する原因や補修提案などを公平な立場から提供するものです。
具体的なレポートが得られるため、オーナーや管理会社との合意形成にも有効です。
(5)信頼できる業者選びのポイント
病院やクリニックなど、公共施設での雨漏り修繕の経験がある業者がおすすめです。
住宅と施設は構造体が異なるため、経験豊富な業者が安心です。
また、再発の可能性を考慮し、保証内容について事前に確認しておきましょう。
事前の調査にきちんと対応できる業者であることはもちろんのこと、補修内容についてしっかりと説明できる業者であることも重要です。
5.よくある質問

Q1:雨漏りを放置するとどんなリスクがありますか?
衛生管理上の問題だけでなく、カビや腐食による建物の劣化、患者さんやスタッフの健康被害につながる恐れがあります。
Q2:診療を止めずに修繕工事はできますか?
可能です。時間帯・場所を考慮し、休診日や夜間に施工を調整することもできます。
実績ある業者に相談しましょう。
Q3:雨漏り修繕は何日くらいかかりますか?
原因や規模によりますが、軽度で1~2日、大規模な修繕は数日~1週間以上かかる場合もあります。
6.まとめ

クリニックや病院の雨漏りは、診療機能や患者さんの安全性を脅かす恐れがあります。
そのため、早期の原因特定と再発防止策を組み合わせた恒久的な対応計画が不可欠です。
信頼できる業者と連携しながら、定期的な点検・メンテナンス体制を築くことが、医療現場の信頼につながります。
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