「このヒビ、地震によるもの?」病院&クリニックの修繕費用と火災保険を使えるヒビ、使えないヒビの違い

病院やクリニックの外壁や内装に生じたヒビは、見た目の問題だけでなく、利用者の安心感や施設の信頼性にも影響を与えます。
不具合が発生したとき、火災保険を使って修繕できる場合がありますが、すべてのヒビが保険の対象になるわけではありません。
本記事では、ヒビの種類ごとの修繕費用の目安や、火災保険が使えるケース・使えないケースの違い、申請時の注意点などをわかりやすく解説します。
医療機関の安全性と信頼性を守るために、正しい知識と対処法を身につけましょう。
目次
1.病院・クリニックへのヒビが与える影響

まずは、病院やクリニックの建物にヒビが生じることによって起こる影響について解説します。
(1)患者様に与える安心感・信頼感
医療機関は「清潔さ」「安全性」「信頼感」が求められる空間です。
外壁や内装にヒビがあると、利用者に不安を与え、施設全体の管理体制に不安を感じる可能性があります。
特に初診の患者様にとって、建物の衛生・管理状態は安心感を左右する要素の一つです。
(2)放置すると雨漏り・断熱低下・構造劣化などのリスク
ヒビを放置すると、雨水の侵入による内部に湿気が広がり、雨漏りや断熱性能の低下、さらには構造体の腐食や劣化につながる恐れがあります。
医療機器や薬品の保管環境にも悪影響を及ぼすため、早期の対応が重要です。
(3)自然災害により医療機関が被災したことによるヒビである場合
自然災害による損傷であれば、災害復旧事業にかかわる補助金制度が利用できることがあります。
一般的には激甚災害に指定された地域の自治体、または国が交付します。
施設が加入している火災保険や地震保険でも、契約内容によって修繕費は保険が適用される可能性があります。
契約・特約内容を確認しておくとよいでしょう。
2.ヒビ修繕の進め方と修繕費用の目安

ここからは、ヒビ補修をする際の修繕費用の目安や工事の流れをご紹介します。
(1)外壁のヒビ補修:数万円~数十万円
内容 | 費用の目安 |
ヒビ補修(1箇所あたり) | 1~10万円程度 |
外壁塗装 | 1,600~5,000円/㎡ |
外壁張り替え | 6,800~9,000円/㎡ |
(2)内装クロス・天井修繕:数万円~
内容 | 費用の目安 |
クロス張り替え | 1,000~2,000円/㎡(グレードによる) |
天井修繕 | 2万~7万円/箇所(修繕種類による) |
(3)大規模修繕(構造体補強など)
施設の規模 | 費用の目安 |
小規模施設 | 700万~3,000万円 |
中規模施設 | 3,000万~1億円 |
大規模施設 | 1億~5億円 |
(4)修繕工事の流れと注意点
一般的な修繕工事の流れは次の通りです。
- 現地調査・原因究明と診断
- 修繕費用の見積もりと修繕計画
- 保険申請(適用になる場合)
- 修繕について利用者に告知
- 工事着手
- 完成・アフターフォロー・メンテナンス
最初に不具合の原因を明らかにすることが大切です。
一時的な対処では再発の恐れがあり、業務にも大きく影響します。
改善計画が固まったら、工事期間と工事着手の最適なスケジュールを立てます。
利用者が不便を感じることをできるだけ避けられるように計画を進めます。
着手~完了までスムーズに進められるかどうかは、依頼する業者によっても左右されることがあります。
3.火災保険で修繕費用をカバーできるヒビとは?

火災保険は、火災だけでなく「自然災害による外力」や「突発的な事故」による損傷にも適用されることがあります。
ここでは、ヒビの原因別の工事費用の目安と保険申請のポイントを解説します。
(1)火災保険が適用されるケース
次のようなケースでは、ヒビの修繕費用が保険で補償される可能性があります。
①台風・突風・大雪などの自然災害
強風によって外壁に亀裂が入ったり、積雪の重みで構造に負荷がかかった場合などは、火災保険の対象となることがあります。
②突発的な事故
車両の接触や物の衝突・飛来など、予期せぬ外的要因による損傷も補償対象です。
これらのケースでは、損傷の原因が明確であること、そして保険契約の内容に該当することが重要です。
(2)火災保険が適用されないケース
一方で、以下のような原因によるヒビは、火災保険の補償対象外となるため注意が必要です。
①経年劣化や施工不良によるもの
建物の老朽化や、過去の施工ミスによって生じたヒビは、保険ではなく自己負担での修繕が基本となります。
②地震によるヒビ
地震による損傷は火災保険では補償されず、別途加入している「地震保険」が適用されます。
③美観上の軽微なヒビ
構造的な問題がなく、危険性や進行性が認められないヒビは、保険の対象外となることが多く、補修しても保険金が支払われない可能性があります。
保険の適用可否は、損傷の原因と保険契約の内容によって判断されるため、専門業者による診断と、保険会社への事前確認が重要です。
(3)原因別のヒビ修繕工事例と、保険活用および工事費用目安
①地震
地震による外壁・基礎のヒビ割れ補修、クロスの張り替え、構造補強による工事費は、小規模工事で10万~30万円、中規模工事で30万~100万円、大規模工事で100万円以上が目安です。
地震によるこうした修繕工事は、火災保険は対象外、地震保険で補償可能です。
②台風・強風
台風や強風による外壁のクラック修繕、シーリング打ち替え、屋根材ズレ補修などの工事費用目安は10万~50万円で、火災保険の補償対象です。
③大雪・積雪
大雪や積雪による屋根・外壁の亀裂補修、雨漏り補修工事などの工事費用目安は10~40万円程で、火災保険の補償対象です。
④突発的な事故(車の接触など)
他人の車が自宅に飛び込んできたなどの、突発的な事故による外壁やフェンスの修繕、モルタル補修工事などの工事費目安は5万~30万円程度で、火災保険の対象となります。
ただし、自分の車による自宅の破損については補償の対象外なので注意しましょう。
⑤経年劣化
経年劣化による外壁の全面塗装、モルタル補修、シーリング再施工の工事費の目安は30万~150万円程度、火災保険の補償対象外です。
⑥施工不良
施工不良による仕上げ直しや再補修、部分解体や再施工などの工事費の目安は、状況次第ですが数十万円以上となります。火災保険の補償対象外です。
新築から10年以内であれば、施工業者が責任を負います(住宅瑕疵担保責任保険)。
リフォーム工事の場合、リフォーム瑕疵保険に入っている業者であれば、瑕疵保険の補償を受けられる可能性があります。
(4)保険申請の流れと失敗しないためのポイント
火災保険や地震保険を活用してヒビの修繕費用を補償してもらうためには、正しい申請手順で申請することが不可欠です。
申請の不備や証拠不足によって、保険金が支払われないケースもあるため、以下のポイントを押さえておきましょう。
①専門業者による調査・診断書が必須
保険会社に損害を認めてもらうには、第三者による客観的な診断が必要です。
建築士やリフォーム業者などの専門家に依頼し、ヒビの原因や損傷の程度を記載した診断書を作成してもらいましょう。
保険会社はこの診断書をもとに、補償の可否を判断します。
②写真撮影のコツ:発生日時・災害との関連を明示
損傷箇所の写真は、保険申請において非常に重要な証拠となります。
撮影時には以下の点を意識しましょう。
- ヒビの全体像と近接写真を両方撮る
- 撮影日を記録し、災害発生日との関連性を示す
- 被災直後の状態がわかる写真があると、より有利になる
③申請の期限(3年以内)に注意
火災保険の損害申請には原則3年以内という期限があります。
災害発生から時間が経つと、損傷の原因が曖昧になり、保険会社が補償を拒否する可能性もあるため、早めの対応が重要です。
④申請代行をしてくれる工務店・リフォーム会社の活用
保険申請は書類作成や証拠整理など、専門的な知識が求められる場面もあります。
最近では、申請代行サービスを提供している工務店やリフォーム会社も増えており、こうした業者を活用することで、申請の成功率が高まり安心です。
災害復旧事業に係る補助金がおりる可能性がある「激甚災害」とは?
激甚災害とは、災害の規模が大きく、国が特別な支援を必要と認めた災害のことです。
指定されると、災害復旧事業に係る補助金が交付される可能性があります。
地震だけではなく、洪水や土砂災害などでも認定されることがあります。
4.よくある質問

Q1. 小さなヒビでも火災保険を使えますか?
ヒビの大きさではなく「原因」が重要です。
台風・強風・大雪などの自然災害で発生した場合は、小さなヒビでも保険の対象になる可能性があります。
ただし、経年劣化や施工不良によるものは対象外です。
Q2. 地震でできたヒビは火災保険で補償されますか?
いいえ、地震による損害は火災保険の対象外です。
地震保険に加入している場合のみ補償を受けられます。
地震かどうかの判定には、専門業者の診断書や写真が役立ちます。
Q3. 修繕工事の費用はどのくらいかかりますか?
ヒビの規模や場所によって異なります。
外壁の部分補修なら10万~30万円程度、内装クロス補修は数万円、大規模修繕や構造補強では数百万円以上かかることもあります。
早めに修繕するほど費用は抑えられます。
Q4. 火災保険の申請は自分でできますか?
可能ですが、必要書類の作成や原因の特定には専門的な知識が必要です。
建物修繕に詳しい工務店やリフォーム会社に調査・申請サポートを依頼するとスムーズです。
Q5. 申請には期限がありますか?
はい。火災保険は原則として「損害が発生してから3年以内」に申請しなければなりません。
気づいたらすぐに調査・申請を進めることが重要です。
5.まとめ

病院やクリニックのヒビは、見た目だけでなく機能面・安全面にも影響を与える重要な問題です。
自然災害による損傷であれば、火災保険や地震保険、さらには補助金制度の活用も可能です。
まずは専門業者に相談し、正確な診断と適切な修繕を進めましょう。
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